「Wake Up, Girls! Advent Calendar 2024」17日目の日記がやってまいりました。昨日の御担当は「らさん」です。よければ、必ず、御覧ください。
本日の演目は「もなかこわい」です。それではどうぞ。
ようこそのお運びで、厚く御礼申し上げます。
舞って乗っての亭号に、笑み申す音と書きまして、舞乗亭笑申音と称します。以後、お見知り置きを。前乗りしてえし、舞い降りてえ、えもーしおんの名のとおり、好きなまちはシオンタウン、ただし園崎姉妹では魅音派でございます。
minority emotionsの「s」は外しておりますが、複数形にできるくらい同好の士の方々がわんさか増えることを願っている次第です。
さて、落語ってぇもんは何百年も前から続いてきていて、伝統芸能なんて言われることもございますが、この落語とオタクの相性ってのが存外良いようで。落語を取り上げた漫画やアニメなんてのも枚挙に暇がございませんし、そのままずばりオタク落語なんてぇのもあるようですな。ま、私もそのオタク落語なるものの真似事なんてしてみようかと、そういう具合なんですが。
ただまぁ、考えてみますと、オタクも落語に負けず劣らず、古よりいらっしゃったのやもしれませんな。呼び名こそオタクではなかったとしても、好事家、同好の士といった方々は、洋の東西を問わず、いろいろな時代で、それぞれの好きなことにのめり込んでいたわけです。
オタクのイメージも移り変わっていますが、オタクという言葉が指し示す範囲は当初から広大でして。〇〇オタクって接尾辞と膏薬はどこへでもつくのかもしれません。となると、その好きなものも違ってくるんでございますが、同じものが好きだと思っているオタク同士でも、その「好き」は似ているようで、実は異なっていたりもするわけで。こういった辺りがおもしろくもあり、おそろしくもあり。
いずれにしても、好きって言える自分が好き、と胸を張っていたいもんですが、同じはずの好きですら差があるってぇことは、嫌いや苦手となればなおのこと。何が嫌いかより何が好きか、で語りたいのはやまやまですが。
甲:おっ、こっちこっち。結構迷ったんじゃない。ここのカラオケ、わかりにくい場所にあるんだよね。
甲:すみません、追加の入室で一名、部屋番号は313です。はい、お願いします。
甲:よし、じゃエレベーターで行くか。うん、あとはみんなそろってるよ。そう、今回もあいつが予約をしてくれたんだけど、部屋番号のこだわりがあるみたいでさ。とは言っても、7階はまだしも、73号室はそうそうないよな。
甲:おぅ、最後の一人連れてきたぞ。とりあえずはそこら辺座っちゃって。一杯目はどうするよ。生ね、わかった。じゃ注文するけど、ほかはまだ飲み物あるかな。
甲:あっ、すみません。飲み物の注文で、生ビール一つお願いします。はぁい。
甲:にしても、さっきも話してたんだけど、みんな変わんないね。いや、変わっていくものたちもあるんだろうけれど、本質的なところ、っつうのかな。相変わらずだなって。
甲:おっ、ビール来たね。はい、どうもです。
甲:注文してから来るまで早かったね。この時間だと、まだほかに客もいないのかもな。こうやって昼間っから飲めるなんざぁ贅の極みだね、まったく。
甲:よし、みんな丸太、じゃねえ、飲み物は持ったな。じゃあ改めて乾杯といきますか。では、かんp、えっ、なに、またあれやるの。いや、さっきやったばっかだし。もういいじゃん、飲もうよ。
甲:ああ、わかったわかった、やりますやります。
甲:がっしょう。ありがとうをためらわz、いやいやそろってたでしょ。完璧にバチーンいってたって。ああはい最初からね。もう。ガッショウアリガトウヲタm、いやだからそろってるって。これ終わらんぞ。てか始まらんぞ。ビールの泡もなくなるって。ええい、モウガマンデキナーイ、はいカンパーイ。
甲:ぷはぁ。ふうっ。まぁそう怒りなさんなって。全員そろう前の乾杯で最後までやったんだしさ。
甲:それはそれとしてよ、この五人で集まるなんていつ以来かね。オンラインで話したりとかはしてたけど、実際会うのは久々だよね。あぁ、あのライブか、そうかあれが直近になるのか。結構間が空いたね。
甲:どう最近は。また現場行ったりしてんの。
乙:そうだね、おかげさまでちょいちょい行ってるよ。こないだ、また気になるユニットが出てきて、追っかけだしたところなんだけど。ただ、これまで通っていたところもあるからさ。何が怖いってイベ被りよ。スケジュール調整も戦々恐々ですわ。
甲:まぁた推し増ししてんのか。懲りないねぇ。
甲:その点、お前さんはいまだに一途にガチ恋一本槍なんだろ。
丙:ガチ恋か否かはさておき、まぁそうね、単押しは継続中だね。でも、俺も最近怖いものがあってさ。あれよ、「大切なお知らせ」ってやつよ。界隈でもケッコンノゴホーコクが増えつつあるから、次はうちの推しなんじゃないかって気が気じゃない。あぁ、こんなことなら、もっと前世で功徳を積んでおくんだった。
丁:結婚なら内容としてはおめでたい分、まだいい方でしょ。「大切なお知らせ」で怖いのは「引退」とかだって。「卒業」と言えば聞こえが良いというか、おめでたいような気もしてくるけど、これが「脱退」だった日にゃあ目も当てられんよ。推しているグループでも櫛の歯がかけるようにやめる子が続出したことがあって。「お知らせ」の文字を見るたび、それこそ次こそ自分の担当の番なのか、ってびくってなったりほっとしたりしたもんよ。
甲:なるほどねぇ、怖いといえば、俺はいろいろな作品のキャラで、先輩ポジションどころか先生や親に近づく、何なら追い越しつつある自分の年齢が、って、おいおい、どうしたよ。さっきからむすっとして。あれか、乾杯で「がっしょう」やらなかったのがまだ気に入らねぇとかか。
戊:いやね、黙って聞いてりゃ、寝ぼけたことをお抜かしになりやがっていらっしゃるなと思ってね。
甲:たいそうな啖呵を切るじゃねぇか。いってぇ何が寝ぼけてるってんだい。
戊:まず何から話すのかと思えば、イベ被りが怖いだあ。そもそも何だよイベ被りって。イベリコ豚のぶた肉炒めとイベリコ豚のとん汁で、イベリコでもダブったのかよ。
乙:いやイベリコ豚のとん汁こそ何なんだよ。イベ被りくらいわかるでしょうよ。
戊:俺の辞書に「イベ被り」の文字はない。それに「推し増し」の文字もなぁ。推しってぇのはそんなマシマシにできるもんなのかね。アブラかニンニクか何かと勘違いしとりゃせんか。この手でつかめるものには限りがあんだよ。俺らは容量が大きくないし、要領も良くないんだからなおさらじゃねぇか。
甲:おうおう、言うね言うね一丁前に。お前さんもガチ恋勢だったけか。
戊:ガチ恋もガチグマもへったくれもないんだよ。結婚云々のくだりも気に入らねぇな。この多様性の御時世、別に結婚だけが幸せのすべてたぁ言わねぇけどよぉ、結婚が幸せっつうならそれも良し、それ以外の幸せまでひっくるめて、推しの幸せを願い、推しの幸せを喜ぶのがオタクってもんだろうがよ、ええっ。
丙:それはわかるけどさ。
戊:いんや、わかってないね。何が功徳だ。もっと積んでおくんだったって、少しは功徳を積んでいたみたく言いやがって。現世でも前世でも前前前世でも、積んでるのは買ったきり手つかずのゲームやらラノベくらいだろうが。ああ、後は人生も詰んでるか。功徳だ何だくどくどふぬけたことほざいてっと、ブラッドムーンぶちかますぞこら。
戊:それから、引退だか卒業だか脱退だか知らねぇがよ、自分の推しさえ残ってりゃそれで良いのか、あぁん。
丁:んなわけないだろ、誰にもやめてほしくなんかなかったよ。
戊:そう言いつつ「自分の推しじゃなかった」ってほっとしたのは、裏を返したら「ほかのメンバーでまだましだった」ってことだろ。そのやめていったメンバーを推していたオタクとも、それまで一緒に同じグループを応援してきたんだろうが。そいつらに顔向けできんのかよ。おめでたいのはその頭ん中じゃねえのか。
甲:まあまあ、いくら何でも、そいつぁ穿ちすぎがスギルってもんだぜ。スタートしたメンバー全員でゴールまで続けられるってぇのは、当たり前のことじゃねえんだからさ。
甲:あれかな、ちょっと酔いもスギてんじゃねぇか。黙ってひたすら飲んでたもんな。
甲:でも「大切なお知らせ」といえば、あれもあるよな、解散と、おい、どうした。急にぶるぶる震えだしたぞ。やっぱり飲みすぎたんじゃ。
乙:わかったっ、こいつ「解散」ってワードが怖いんだっ。そうだろ、なっ。かぁいっさん。かぁいっさん。かぁいっさん。
甲:おい、よしなって。目の色がとんでもないことになって、血涙でも流さんばかりのものっそい表情してるじゃねぇの。
戊:解散怖くない、解散怖くない、解散怖くない、解散怖くない、解散怖くない、解散怖くない、解散怖くない。
甲:大丈夫か。お、落ち着け。
戊:モウナニモコワクナイ。
甲:うわぁ、いきなり落ち着くなっ。
丙:解散はさておき、何も怖くないってことはないだろ。何かないか何かないか。
戊:俺が怖いぃっ、俺がscaryっ、冗談じゃねぇっ。冗談はよしのちゃんですよ。怖いものなどあんまりない、否、もうなかばい。もうなか、なか、な。
丁:おっと、また様子が変だぞ。急にエセ九州弁が混ざりだしたし。やっぱ解散が怖いんじゃね。
戊:そんなチャチなもんじゃあ断じてねえ。もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ。
甲:チャチにしてはさっきの反応は派手だったけどな。で、そのもっと恐ろしいものは結局何なんだよ。
戊:モナカさ。
甲:もなか、ってぇと、あれかい。マカロンの先祖みたいな。
戊:いやいや、あんな甘くて丸くてあんこたっぷりのお菓子が怖いとか。そんな奴おらへんやろ。
戊:俺が怖いMONACAと言ったら、主に音楽を行う中身の詰まったクリエイター集団の方よ。
甲:音楽制作会社を怖がる奴も、そうそうおらんと思うけどな。あ、わかった、あれだろ、あふれ出す才能が怖い、おそろしい子っ、みたいなオチだな。俺は詳しいんだ。
戊:それもある。それもあるんだが、それ以上に彼らの楽曲を耳にすると、本能的に怖さを感じるようにされちまってんだ、身体が。とりわけWake Up, Girls!関連が怖いのなんのって。鳥肌立ちっぱなしだったり、震えが止まんなかったり。かと思えば、動悸が激しくなったり、汗があふれ出したり。日によっては涙まで。最近は気ぃ抜くとメロディーが頭ん中永久リピートするもんだから、休まる暇も、ってそうこう話していたら、ほら、今も、うっ。
甲:おいおいおい、酔って赤かった顔が白くなったかと思えば、今度は青くなってきてんぞ。洗面所でも行ってきなって。場所わかるかい。気ぃつけてな。
甲:大丈夫かな。相当ふらつきながら行ったけど。やっぱり飲み過ぎだな。ビールからハイボールからあげく日本酒までちゃんぽんしてたもんな。楯野川に仙禽、かぁーっ、良い酒が揃ってんな。
乙:酔っ払ってるにしたって、随分とまあ好き勝手言われたもんだぜ。あんなに口悪かったけか。
甲:昔から絡み酒のきらいはあったがな、ひねくれ具合に拍車がかかってきたのは、五、六年くらい前から、そうだよ、あいつが口にしたうぇいくあっぷがーるず、ああ、それで「解散」であそこまで反応してたのか。
甲:今日いない面子も含めて、あいつに誘われて七連番、とかやったねぇ、覚えてるか。あのライブのセトリにもMONACAの曲があったってことだよな。怖いとは思わなかったけど、手強いみたいな感じはあったかもしれん。
丙:妙だな。あんなにはまっていたウェイクアップガールズの歌が、今になって怖くなるなんてことがあるのか。
甲:可愛さ余って憎さ百倍、だとちと違うか。あれだよ、別れた恋人との想い出のメロディーが悲しくなるから聞けなくなる、みたいな。
丁:って、別れる前にそもそも恋人なんていたことないやないかぁい。
甲:オマエモナー。ハッハッハッハ。はぁ。
甲:ま、確かに妙か。聞いただけで怖くなるなんてことが本当にあるのかどうか。
丁:その謎を解明するため、我々調査隊はある場所へと向かった。
甲:ある場所とは。
丁:ここだよ。ここカラオケだぜ。曲がいくらでも流せるではないか。実際に聞かせてみて、その反応を見てみようや。
甲:何曲かは歌えると思うけど、俺たちの下手くそな歌でも怖がるかね。
乙:本人歌唱版は、っと。いくつか検索でヒットはするけど、今ひとつ何かがたりない。とりあえずBGMだけでも流してみるかい。
丙:せっかくだから、俺はクオリティの高い方法を選ぶぜ。
甲:と言うと。
丙:ここの部屋、CDとかも流せたでしょ。この辺りなら売っていそうなところも多いし、まだこの時間なら店も開いてるはず。
甲:えっ、わざわざ買いに行くのかい。ずいぶんと気合の入った嫌がらせだね。
丙:べ、別に、ぼろくそに言われたことへの仕返しなんかじゃないんだからね。
丁:そのとおり。我々はあくまで学究の徒として、この不可思議な現象を解明するためにだね。
甲:はいはい、そういうことにしときましょうか。おっと、みんな乗り気だね。物好きが集まったもんだよ。
甲:一度に部屋から抜け出すのも変だし、あいつが戻ってくるまでは俺が部屋に残っておくよ。適当に交代しながらある程度集められた頃合いで、そうさな、1階の受付の辺りで一旦集合しようか。
甲:おう、おつかれ。洗面所からなかなか戻らないもんで、様子を見に行ったらさ、個室で座って眠りこけてやがんの。ああ、何とか313号室に戻って、今はソファーで寝ちまってらぁ。
甲:どれどれ、どのくらい集まったかね。うわぁ、なんだか凄いことになっちゃったぞ。
甲:どこからいくかな。じゃ初めはこれ。CD8枚組で、Blu-rayまで付いてると。名前がメモリアルか。MONACA以外も含めて曲数が70から80以上入ってるって、もうこれ一つでいいんじゃないかな。
甲:で次はこれだけど、これもベストアルバムで、しかも三つ。さっきのより出たのは前で、結構曲の被りもあるんじゃない。イベリコ豚どころじゃない被りが。えっ、なに、メモリアルだけだとあいわんくらぶがなかったって。知らんがな。あとは劇伴もあるよ、ってどれだけ流すつもりなん。カラオケのフリータイム終わってまうよ。
甲:で、今度は何。インターネット配信のアルバムですか。はぁはぁ、ソロ曲にもMONACA曲があると。君ら、実はすごく詳しいよね。
甲:それで最後、レシートしか見えないんだけど、これはいったい。ほうほう、2025年1月29日に映像と音楽のコンプリートパッケージが発売するのか。それを予約しておいたと。うん。でかした。ただ、惜しむらくは今日流したかったんだよなぁ。あいつほどじゃないにしても、みんなそこそこ酔ってるだろ、な。
甲:せっかく集めてもらったわけだし、とりあえず全部持って上がるか。さてどれから流すかね。最初のメモリアルの、よいしょ、一枚目の白いのからにしようか。
甲:どうするよ、音楽流した後。部屋の中だと狭いから、万が一暴れだしたりでもしたら危ないよな。CDセットして始まったら、廊下から様子を見てようぜ。逃げないようにドアは押さえといてさ。んっ、暴れ出したら室内のものとか壊すんじゃないかって。そうなったら、このCD代その他諸々と合わせてあいつに請求するまでよ。
甲:どうだ、うん、まだ寝てるな。起こさないようにそおっと。よしここ押して。CD入れて。閉めて。えっとリモコン、リモコン。お、これドア閉めても、外からリモコン反応するな。じゃあ始めるか。いくぞっ。
甲:どうだ、スタートした、かな。このドア、結構防音しっかりしてるな。何となくは聞こえるけど。
甲:お、ビクってなったぞ。あ、立ち上がった。お、おい大丈夫か。凄まじい咆哮が聞こえたけど。あれは何だ、暴れてる、わけではないのか。
乙:なんだろう、音がほとんど聞こえないと、MPが減らされそうなおどりにしか見えんな。
甲:とは言え、ところどころ叫んでるみたいだし、あんなに激しく動いていたら本当に器物破損になりかねんな。よし、リモコンで次の曲に飛ばすぞ。
甲:って、これも駄目だ。またもや最初に叫んだ後、今度は何か唱えだしたぞ、呪文か、呪文なのか。減らされたMPを吸収したとでも言うのか。次だ次。
甲:今度は一転、しんみりしちゃった感が出ているけど。うわっ、本人が言っていたとおり涙が出て、も、もうあれは滂沱だよ。いろいろな意味でやばいって。次。
甲:な、何だ。急に姿が消えたぞ。どうなってんだ。
丙:おそろしく速い崩れ落ち。オレでなきゃ見逃しちゃうね。
丁:今のは芸術点高いですねぇ。近頃はチェ〇オのメロン味くらいわざとらしい頭抱え事案もある中、一連のムーブが実にスムーズ。これが意図的なものだしたら、相当な修練を重ねてきてますよ。
甲:言うとる場合かっ。ええいっ、もう部屋に入るぞっ。
甲:おいっ、えぇっと、その、な、何なんだお前は、さっきから。
戊:何なんだ、はこっちの台詞だよ。いきなり曲を止めやがって。あ、さっきから途中で切り替わってたのもお前たちの仕業か。これから盛り上がるっていう良いところで何しやがる。鬼っ、悪魔っ、お前ら人間じゃねぇ。おかしいですよカテジナさん。
甲:ったく、情緒が不安定にもほどがある。もはやお前が一番怖いまであるわ。本当に怖いものがないのかよ。
戊:そうだな、落ち着いた感じが二曲続いたから、ここらで一曲、熱いリトチャレが怖い。